2017新春浅草歌舞伎

お正月は浅草で…
新春浅草歌舞伎が浅草を盛り上げます!

浅草公会堂にて

平成29年1月2日(月)初日~26日(木)千穐楽
第1部 午前11時開演  第2部 午後3時開演

2017新春浅草歌舞伎

■ 公演スケジュール ■

新春浅草歌舞伎(表)

★:1月15日(日)第2部は、「着物で歌舞伎」の日です。皆様、お着物でご観劇下さい。
「着物で歌舞伎」ご来場のお客様全員に記念品を進呈いたします。


■ 演目と配役 ■

演目と配役

■ 演目紹介(あらすじ) ■

第1部(午前11時開演)
一、 『傾城反魂香』

 山科の里にある土佐将監光信の館へやって来たのは、土佐将監(桂三)の弟子で絵師の浮世又平(巳之助)とその女房おとく(壱太郎)。吃音のため出世ができない又平は、細々と暮らしているが、弟弟子の修理之助(梅丸)に土佐の名字が与えれたことを聞き、自分にも土佐の名字を授けてほしいと将監に頼みに来たのだった。上手く話せない夫に代わり、おとくが代弁して願い出るが、将監はその願いを却下する。

 又平夫婦が悲嘆に暮れるところに、狩野雅楽之助(隼人)が駆けつけ、師の狩野元信が仕える主家で騒動があり、息女救出の協力を求める。これを聞いた又平は必ず自らが姫君を救い出すと申し出るが、将監は修理之助にこの役目を与え、又平には武道ではなく、絵の道で功を立てるようにと諫めて立ち去る。もはや望みが叶わないと悲観する又平はその場で自害を決意し、庭先の手水鉢を石塔と定め、精魂込めて手水鉢に自画像を描き上げる。すると、不思議なことにその自画像が手水鉢の厚い石の裏から表へと滲み出てくる。この奇特を見た将監は、又平の筆の功を褒め、土佐の名字を与え、姫君の救出に向かわせるのだった。

 『傾城反魂香』は近松門左衛の作で、全三段からなる時代物です。今回上演される「土佐将監閑居の場」は、通称「 吃又(どもまた)」と呼ばれる場で、吃音の絵師・又平と夫の代弁をする女房おとくの夫婦愛を中心にした物語です。不遇な夫婦が将来に絶望し、おとくが「手も二本、 指十本ありながら」と嘆く台詞は聴きどころです。死を決意する夫婦ですが、今生の名残に又平が描いた絵が奇跡を起こします。 味わい深い義太夫狂言の名作です。

二、『義経千本桜 吉野山』

 壇ノ浦の合戦後、兄の源頼朝から不興を買った源義経は西国へと落ち延びていく。義経一行が吉野の山中に身を隠していると聞いた静御前(壱太郎)は、義経の後を追って桜が満開の吉野山までやって来た。しかし、道中を供する佐藤忠信の姿が見えないので、静御前は義経から譲り受けた初音の鼓を取り出して、それを打つ。すると、どこからともなく佐藤忠信(松也)が姿を現す。ふたりは、源平合戦の頃を思い出し、やがて忠信が壇ノ浦の合戦の様子を語り始める。

 そこへ、静御前の行方を探す鎌倉方の追手の早見藤太(巳之助)が捕手たちを引き連れて現れ、静御前を捕らえようとするので、忠信は勇ましく立ち廻る。そして、捕手と藤太を蹴散らすと、忠信は静御前を護りながら、山奥へ分け入っていくのだった。

 『義経千本桜』の四段目にあたる『吉野山』は、「道行物」の代表的な舞踊のひとつです。 通常、「道行」といえば、恋人関係の男女の道行を指しますが、この作品は義経の後を追う静御前と忠臣・佐藤忠信との主従関係で描かれているのが特徴的です。しかし、この忠信、実は狐が化けた姿というのも幻想的です。満開の吉野の桜を背景にして、ふたりが「女雛男雛」 の姿を艶やかに見せ、忠信が壇ノ浦の合戦の様子を勇壮に描く件や、追手の早見藤太と可笑しみあるやりとりを見せるなど見応え満載です。新年に相応しい華やかで美しい歌舞伎の舞踊です。

第2部(午後3時開演)
一、『双蝶々曲輪日記 角力場』

 大坂堀江の角力小屋では、素人力士出身の放駒長吉(松也)と人気力士の濡髪長五郎(錦之助)との取組が行われるので、賑やかな様子。濡髪を贔屓にする山崎屋与五郎(隼人)は、 馴染みの遊女で藤屋抱えの吾妻(梅丸)を先に茶屋へ向かわせ、角力見物。しかし、予想に反して、勝利を収めたのは放駒。放駒を取り立てた平岡郷右衛門は、実は吾妻に横恋慕をしていて、放駒に吾妻の身請けの助力を頼む。

 他方、濡髪は勝負で負けたことを与五郎に詫びると、吾妻の身請けを自分に任せてほしいと伝える。そして、与五郎や弟子たちを先に行かせると、放駒を呼び出す。濡髪は、放駒に自分の贔屓客である与五郎に吾妻を譲ってほしいと言い、郷右衛門の身請け話を断るように と頼む。しかし、放駒がこれを断ると、濡髪は今日の取組は、吾妻の身請け話の為にわざと勝ちを譲ったと明かし、自分の願いを聞き入れるように頼む。しかし、これを聞いた放駒は 怒り出し、濡髪を詰る。この様子にさすがの濡髪も堪忍がならず、互いに恨みを残したふたりは、後日の勝負を約束してその場を後にするのであった。

 『双蝶々曲輪日記』の二段目にあたる「角力場」は、力士たちの達引を描いた物語です。 人気力士の濡髪長五郎は貫禄姿であるのに対して、素人力士の放駒長吉は青二才の若々しい雰囲気で、二人の対比と意地の張り合いに面白みがあります。また、与五郎は「つっころばし」と呼ばれる和事の役。弱々しい二枚目ですが、濡髪を褒める茶店の亭主と浮かれ、濡髪の褞袍を亭主と一緒に着て歩くなど、愛嬌と可笑しみに溢れた役柄です。上方の俠客の義理立てを描いた世話物です。

二、『御存 鈴ヶ森』

 東海道品川宿付近の鈴ヶ森は、旅人の金品を狙う雲助たちの溜まり場になっている。 そこへ駕籠が通りかかり、乗っていた美しい若衆の白井権八(隼人)が降ろされる。雲助たちは権八に襲いかかるが、権八はひとりで雲助たちを斬り払う。やがて、権八が立ち去ろうとすると、傍らの駕籠の中から権八を呼び止める声がする。駕籠の中から現れたのは、江戸 花川戸の幡随院長兵衛(錦之助)。義俠を重んじる長兵衛は、権八が追われる身であることを承知の上で、世話をすると申し出る。これを聞いた権八は喜び、快く受け入れ、ふたりは江戸での再会を約束するのだった。

 『鈴ヶ森』は、四世鶴屋南北の作による『浮世柄比翼稲妻』の二幕目に当たりますが、現在では単独で上演される作品です。お尋ね者の白井権八と江戸の俠客・幡随院長兵衛が出逢う有名な場面で、薄暗い鈴ヶ森を舞台にしながら歌舞伎の様式美に溢れた一幕です。若衆の白井権八は、鮮やかな美しさと色気を備えた存在。それに対して、長兵衛は江戸っ子の粋と貫禄を見せる大きな役どころ。今回は錦之助の長兵衛と隼人の権八という親子での共演も話題の一幕です。

三、『棒しばり』

 大名の曽根松兵衛(隼人)に仕える次郎冠者(松也)と太郎冠者(巳之助)は無類の酒好き。大名が外出するたび酒蔵の酒を盗み飲むので、大名は困り果てている。そこで大名は一計を案じて、太郎冠者を後ろ手に縛り、次郎冠者の両手を棒に縛りつけて出かけて行く。しかし、縛られたふたりは、余計に酒が恋しくなり、ふたりはそのまま酒蔵へ行く。そして、 ふたりとも両手が使えないながらも知恵を絞り、協力しあって酒を飲み交わすことに成功す る。機嫌を良くしたふたりが、酒の肴に舞を踊って大騒ぎするところへ大名が帰ってくる。 酔ったふたりの様子を見て怒り心頭の松兵衛はふたりを一喝するが、次郎冠者と太郎冠者はこれをかわし、その場を逃げて行くのであった。

 狂言の『棒縛』を舞踊化した松羽目物です。酒好きのために主人から両手を縛られた太郎冠者と棒に手を縛りつけられた次郎冠者が、両手が不自由なまま巧みに酒を飲み交わし、存分に踊って見せるという趣向が面白く、人気の作品です。最大のみどころは、酒に酔ったふたりが舞を舞う件。太郎冠者は足を用いてリズミカルに踊り、次郎冠者は棒に縛られた形を生かして軽快に踊っていきます。ユーモラスかつテンポの良い展開で、長唄の調べの中で息のあったふたりの舞踊をお楽しみください。


■ 出演者 ■

尾上松也  (おのえ まつや) 【二代目 屋号:音羽屋】
六世尾上松助の長男。昭和60年1月30日生まれ。平成2年に二代目尾上松也を名乗り初舞台。平成27年から連続して新春浅草歌舞伎に出演。これまで浅草歌舞伎では『忠臣蔵』の勘平や『四の切』の狐忠信、『与話情浮名横櫛』の切られ与三郎など、時代物、世話物の大役に初役で挑んできた。他方で、平成28年は新派公演にも初出演。またミュージカル『狸御殿』では座長を勤め、芸域の広さを見せた。テレビや舞台の出演など多方面で活躍しながら、若い世代を率いる力を備えた華のある立役。新春浅草歌舞伎には3年連続5回目の出演。
坂東巳之助  (ばんどう みのすけ) 【二代目 屋号:大和屋】
十世坂東三津五郎の長男。平成元年9月16日生まれ。平成3年に初お目見得の後、平成7年に二代目巳之助を襲名し初舞台。新春浅草歌舞伎には平成26年から連続して出演。平成28年の浅草歌舞伎では『三人吉三』のお坊吉三や父が得意とした『毛抜』の粂寺弾正に初役で挑戦した。また、巡業の『獨道中五十三次』では、十三役の早替りと化け猫の宙乗りを猿之助とのダブルキャストで演じて客席を沸かせた。スーパー歌舞伎『ワンピース』にもゾロ、ボン・クレー、スクアードの3役で出演。舞踊の基礎に支えられながら、様々な役柄の可能性を感じさせる花形。新春浅草歌舞伎には3年連続6回目の出演。
中村壱太郎 (なかむら かずたろう) 【初代 屋号:成駒家】
中村鴈治郎の長男。平成2年8月3日生まれ。平成3年に初お目見得の後、平成7年に初代中村壱太郎を名乗り初舞台。幼少時から舞踊や邦楽の基礎を積み重ねてきた実績があり、平成26年に日本舞踊吾妻流七代目の家元・吾妻徳陽を襲名。舞台では女方が中心で、可憐な印象が強いが、最近は色気も匂い立つ。 平成28年は『鳴神』の雲の絶間姫を古風な趣で艶やかに演じた。また『封印切』の梅川では、家の芸を着実に継承し、父の忠兵衛を相手に細やかな情愛を見せた。新春浅草歌舞伎には3年ぶり4回目の出演。
中村隼人 (なかむら はやと) 【初代 屋号:萬屋】
中村錦之助の長男。平成5年11月30日生まれ。平成14年に初舞台。父譲りの端麗な顔立ちと細身の長身が魅力の立役。新春浅草歌舞伎には、平成24年から毎年出演していて、欠かせない存在である。平成28年の浅草歌舞伎『三人吉三』ではお嬢吉三に初挑戦し、『四の切』の義経を清新に演じた。また『忠臣蔵』の力弥では初々しさと儚さをみせた。スーパー歌舞伎『ワンピース』にもサンジ、イナズマの2役で出演。近年は、二枚目の容姿を生かして、テレビドラマなどにも出演して新たなファンを獲得。今後の活躍が期待される。新春浅草歌舞伎には3年連続6回目の出演。

中村錦之助 (なかむら きんのすけ) 【二代目 屋号:萬屋】
四世中村時蔵の次男。昭和34年9月29日生まれ。昭和39年に中村信二郎を名乗り初舞台の後、平成19年に二代目中村錦之助を襲名。若い頃から端正な顔立ちで、二枚目役を得意としてきたが、最近は風格も出て来て、芸域の幅と存在感をみせる。平成28年は『忠臣蔵』の若狭之助で、正義感に溢れた様子を凛々しさの中に見せた。『太刀盗人』では田舎者の雰囲気を鷹揚に演じた。平成28年の浅草歌舞伎では、若手俳優たちを牽引し、時に支えながら共に舞台を盛り上げた。新春浅草歌舞伎には(初春花形歌舞伎含め)2年連続3回目の出演。

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